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まえがき
12月3日に掲載されていたニュースです。見出しがいかにも、て感じですしヤフーのトップニュースにも上がっていたのでたくさんの方がご覧になられているかと思います。
近い頃にマイナンバーカードの申請が全国民の60%に到達したというニュースが出たばかりでしたし、マイナンバー(カード)反対派は喜んでこのニュースを見ていることでしょう。
紛失漏洩の実績を確認してみた
紛失・漏洩件数で見ると
この手のニュースでは見出しの文字と数字に釣られがちです。35000という数字と紛失漏洩。いかにも不安を煽る見出しですが、これだけでは何も判断できません。
ということで自分で確認してみました。ニュース本文の通りで個人情報保護委員会という行政機関から年次報告という形のボリューミーな資料が公表されていて、この中にマイナンバーカードに関する苦情や相談件数の実績が載っています。例えば2021年度(令和3年度)実績の場合はこんな感じです。
このニュースでは5年分を対象にしていたので、ここでも同じように5年分をまとめてみました。
年度 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 |
苦情 | 2 | 12 | 24 | 14 | 11 |
相談 | 133 | 130 | 98 | 65 | 88 |
その他 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 |
よくも悪くもコンスタントといったところでしょうか。でもこれだと何人分の情報が漏洩なり紛失されたのかわかりませんね・・・。
何人分の情報が実際紛失or漏洩したのか確認してみた
このニュースで取り上げられているのは上記とは別の情報です。各年の年次報告の中で「特定個人情報の取扱いに関する監視・監督に係る処理状況」というのがあり、ここで「重大な事態」なものを集計したら35000人分だったということです。
・・・
本当かどうか確認してみました。特定個人情報とはマイナンバーを含む情報のことなので、ここに書かれていることは全てマイナンバーからみと理解してOKです。
こうやってみると35000という数字はニアリーイコールで2019年度分のUSBを紛失したやつを指してそう。紛失とか誤送信みたいなことがいいとは言わないけれど、この1件だけをさして、さも全ての行政機関がざるな管理をしてると思わせるような書き方は良くないですね。
悪いのは管理方法であってマイナンバー制度ではない
自分はこのニュースを見て初めてどんな事象が報告されているのか知りましたが、総じて「なんでそんな管理してんの?」としか思いませんでした。皆さんはどうでしょうか。
業務上仕方ないのかもしれませんが、国民に対して「他人には知られないように」とかいって個人番号カードの通知を配っていたくせにUSBというまさに携帯できる情報端末になんで入れて管理してるのかはさっぱりわかりません。市町村単位とかでクラウド管理しておけば、ブツの状態で紛失することは防げるのに、多分整備されてないんだろうなと思います。
ただ、これとマイナンバー制度の善悪は切り分けて考えるべきです。自分は非常に便利な制度だと思ってますし、「人を番号で管理するな」っていったって、民間のサービスでもIDなる英数字情報で個人が管理されてるんですから、民間がOKで国がNGはおかしいでしょう。
これからマイナンバーカードを保有する人も1人当たりの使用頻度も増えていく方向になるのでしょうから管理体制が改善されて紛失漏洩が1件でも消えてくれることに期待です。