この記事のもくじ
この記事では直接的に書籍の内容に触れることはできるだけ避けたうえで、読んでその内容について思ったことなどなど紹介します。
今回紹介する本
『人生100年時代の資産管理術 リタイア後のリスクに備える』です。
人生100年時代と言われて久しいです。
少し前までなら長生きは喜ばしいことだったのですが、今はというと長生きできてしまうからどうやってお金を工面しようかというマイナスなこととして捉えられるようになってしまいました。
とはいえ、生きれてしまうもんはしょうがないので準備するしかありません。
そこで本書では長生きする上での金銭的なリスクと対処方法、考えかたを解説しています。
英語で書かれたものが原著につき日本とアメリカという異なる国では制度がまるっきり違っており、そのまま参考にするとはいきませんが、保険、年金など日本でも関わりのあるトピックも触れられています。
- 自分を株式会社に見立てて資産を洗い出す
- 生命保険の役割
- 分散の重要性
- ローンの有効活用
- インフレ影響
- リタイア後はリターンの順番が重要
- 長生きはリスク
- リスクを把握して生きる
- 個人年金の活用
- 商品の分散
- 資産を把握して、インカムプランを立てる
自分を株式会社に例えるのは面白い試みです。
自分の年収、稼ぎを高める際には年収を売上、所得控除を経費、手取り年収を利益に例える考え方があり、それと似たようなものと思います。
問題は資産形成期よりも資産取り崩し
インデックス投資をしている人であれば永遠の課題となるのがどうとり崩すかです。一応4%ルールという指針的なやり方はありますが、それでもやり方によっては目標とする期間を待たずに資産が0円になるケースが存在します。
それはなぜか?
ここで本書が指摘しているのはリターンの順番の影響です。
一例として次のようなケースを考えてみます。
- ある時点で資産1,000万円あるとする。
- そこから5年間の間に+5%の年が3回、−5%の年が2回くるとする。
- AさんとBさん二人とも1年後に40万円取り崩す、これを5回繰り返すの設定
- Aさんの時は+5%が3回連続できた後に2回連続でー5%の値動き
- Bさんの時は−5%が2回連続で来た後に3回連続で+5%の値動き
これ、5回取り崩している時の資産残高はこのように動きます。
あったりまえの話ですが、もし資産の取り崩しをしない場合はAさんの値動きだろうがBさんの値動きだろうがリターンの掛け算の順番が違うだけなので5年後の金額は同じです。
ところが、取り崩しながら運用するとなると話は別で、しょっぱなにプラスのリターンだったAさんの方がBさんよりも残高が多いことがわかります。
Bさんの方が+5%になるときのもとの金額が減ってしまっているので効果が薄いんですね。1,000万円の+5%と900万円の+5%で差が出るという至極当然の結果です。
4%ルールが失敗するケースはこの一例でいうBさんのパターンとされています。
ですから資産形成はもとより取り崩すときにはリターンがどうやってくるかで運命が変わると知っておかないといけません。
リタイア直後に暴落がやってくる前提の計画がキモ
この本のいいと思ったところ
- 日本より公的な社会保障の薄いアメリカの情報が分かる
- 章別に日本語訳者による日本に当てはめた場合の解説もついている
日本のような手厚い公的制度がない分自己責任で人生100年時代に備えないといけないアメリカだからこそリスク検討が非常に深くなされている印象です。
アメリカと同じくらいの用心をして置いたら日本に住んでる限りは無問題でしょう。
本書の内容に関連して思ったこと
老後のことは先が長すぎるために具に検討することに意味があるのかどうかすら議論になるくらいわからないことです。
今の高齢者の意見を聞いたとて今の高齢者と同じ土俵で老後を迎える保証もないし。
でも、どっちか選べと言われたら過剰に用心しておくほうを選びます。というのも「貯金しといたらよかった」という高齢者の後悔を聞くことはあっても、「もっとお金使っておけばよかった」という後悔を聞かないからです。
もっとお金使っておけばよかったというのは正確には「もっと旅行に行けばよかった」とか「もっと勉強に時間を割けばよかった」のようなお金を使ってする行為に関する後悔として出てくるだけかもですが、お金がある=精神衛生の安定化に寄与するのでマイナスでないというのが偽らざる事実なのでしょう。
この本のおすすめ度と読むのがおすすめな人
おすすめ度は10点満点中10点です。
この本は次のような方が読むのにぴったりと思います。
- 正しく人生100年時代に備えたい
- 日本以外の国の人の意見を聞いてみたい
本当にFIRE、つまり働かないありきで経済的自由を目指すなら用意周到な準備が必要なこと、再認識しました。