この記事のもくじ
この記事では直接的に書籍の内容に触れることはできるだけ避けたうえで、読んでその内容について思ったことなどなど紹介します。
今回紹介する本
『気候を操作する温暖化対策の危険な「最終手段」』です。
ひと昔前までは「小さなことからコツコツと!」なんて言っていた地球温暖化対策がカーボンニュートラルだのESG投資だのと急に熱を帯びてきました。そこまでしないと間に合わないところまで来てしまったと言うことでしょう。今更感。
普通地球温暖化対策といえばいかにCO2排出量を減らすかにフォーカスが当てられますが、もっと歳が若い頃の自分は
- 太陽の周りにシールドを設置しよう
- 人間が住んでいるところをシェルターで覆って冷暖房をガンガンに効かせればいいんだ!
- 火力発電など一切やめてある分だけで生活すればいい(原始時代に戻れ的発想)
なんてなことを考えていたものです。
本書はそんな半分冗談なプランも含めて地球の気候をコントロールする術としてどんなものが研究されているのかを紹介しています。
本書の構成は以下の通りです。
前半は技術に関する解説、終盤は技術的な話というよりは地球温暖化対策を進めていくにあたっての組織、社会、市民の在り方に関する意見となっています。
- このまま地球温暖化が進んだらどうなる?
- 地球温暖化を食い止めるハードルの高さ
- 気候工学とは
- CO2除去(回収)技術
- 局地的な取り組み事例
- 太陽放射改変の事例
- 放射改変の研究状況
- 気候工学で最も大事な要素ーガバナンス
- 気候工学への反応
温暖化対策の奥の手とは?
気候工学とはCO2除去と放射改変の2本立てで構成されています。
CO2除去は言葉を変えるとCCS(Carbon dioxide Capture and Storage:二酸化炭素回収・貯留)技術のことであり、比較的知られた概念です。
もう一つの放射改変というのがいかにも奥の手な響きがします。かじりの部分を説明しておくと地球(地表)が太陽であったまるのは“放射伝熱”によるものです。
これが根本的に地表まで届かない、もしくは、その強度を弱めてやろうというとんでも思想が放射改変です。具体的には次のようなアイデアが提唱されています。
- 宇宙太陽光シールド
- 成層圏エアロゾル注入
- 雲の白色化
- 家屋、建物の屋根の反射率の増加
2つ目は火山が噴火して太陽光が遮られる状況を真似するものです。一番実現性があるとされています(というか1番目が無理筋なのは素人でもわかる)。
いずれにせよ課題は経済性です。
今のESG投資やカーボンニュートラルに託けた技術開発も今までなら金にならなかったのに、従来通り速かったり、安かったり、長持ちしたりすることが良いとされてきたように環境にいいことに価値があるとされるようになったからビジネスとして手出しされている背景があります。
著者も述べているように放射改変は主軸というよりはベースの活動があった上でのこれですが、今後の開発がどうなるか興味があります。SFみたいでワクワクします。
奥の手を使わなくてもいいような行動
この本のいいと思ったところ
- 一般に知られていない技術動向の解説書であること
- 人々、日本はどうあるべきか課題感もわかる
専門書を読まないと得られない情報が確かにあります。
地球温暖化は市民にもよく知られているトピックなので必要な情報は全部開示されていると思いがちですが、こういうものこそ知らないところで動いているものが5年後、10年後の生活に影響するかもしれません。
本書の内容に関連して思ったこと
本書で紹介されているような技術があるなら温暖化対策なんてしなくていいんじゃないかと思ったならそれは大間違いです。
現在の活動の目標は産業革命を基準として+1.5℃以内に抑えると言うものです。今より悪くするのは回避しようという方向性なので、個人的な予想としてはカーボンニュートラルを達成してもここ5年10年で起こっているような「異常気象」と呼ばれるものは減らないと思っています。
(出典:パリ協定の長期目標に関する考察)
ですので技術開発は技術開発、日々の改善は改善で別に必要と考えて公共交通を積極的に使うとか地産地消に取り組むなどが個人個人に求められると思います。
この本のおすすめ度と読むのがおすすめな人
おすすめ度は10点満点中8点です。
この本は次のような方が読むのにぴったりと思います。
- 環境問題に興味がある
- 未来に期待できるような技術についての情報を知りたい
日本は島国だから〜〜とか火力に頼らざるを得ないから〜〜と言ったところで世界はよしとしてくれません(気持ちはわかりますが)。一個人としてできることは確実にしていく意識が第一です。