この記事のもくじ
今までは毎月読んだ本をまとめて紹介していましたが今月からは1冊ずつ紹介します。直接的に書籍の内容に触れることはできるだけ避けたうえで、読んでその内容について思ったことなどなど紹介します。
今回紹介する本
『環境社会学入門』です。
そもそも「環境社会学って何よ!」て思った方、何も不思議なことではありません。アメリカですら1970年代に提唱された学問で日本は1990年ごろから本格的に取り扱われている歴史の浅い学問です。よって非常にマイナーです。
環境社会学で取り扱われる内容は環境問題などのトピックを題材に関わっている人の加害・被害関係や各種運動の背景を関連づけようというもので、ぶっちゃけふわっとしてんなと思いました。
ちなみに筆者は東北大学で教授をしていた方で、当然仙台暮らしをされています。東北好きな自分は勝手に親近感を覚えて読み始めました。
書籍の構成
本書は環境社会学の基礎を説明、はしておらず筆者と環境社会学の関わりが中心となっています。よって学問書というよりは自伝と思って読んだほうがいいと思います(この時点で自分からすると期待外れでした)。
- 筆者が教鞭を取るようになるまでの話
- 新幹線の騒音振動問題:東京ー大宮の速度制限の根っこの話で環境社会学を考えるきっかけにも。
- 東北大学で教鞭を取るようになった話。
- アメリカの原発問題について
- 青森県六ヶ所村が抱える闇の負担:核燃料の処理施設がある市町村です。
- 日本で環境社会学の研究会立ち上げの話
- 持続可能な開発目標について
ここでぶっちゃけばかり書いてもしょうがないのですが、自伝っぽく書くにしてももう少し系統だっていてほしい・・・。一応時系列に章が進んでいるようではありますが。
書籍の気になった内容を一部紹介
自分が本書でほう!と思ったのは筆者が単に学者として活動するにとどまらずNPOの一員として市民運動にも積極的に参画されていること。例えば仙台港の石炭火力発電を差し止めを求める訴訟の原告団長として活動されたエピソードです。大体口先だけの方が多い印象なので、この方は行動力があるなと思いました。
もう一つは気候変動と新型コロナウイルスに類似性があるという主張です。
- 世界共通の課題であること
- 国際的に連携しないと解決しないこと
- いつ解決するか不確実であること
- 日常生活と経済活動の両方に影響していること
- 目に見えない問題であること
- 他人を信じられなくなる
- 人類による自然破壊が真因
7点目はどうかなと思いますがそれ以外は確かに!と頷けるものです。
感想などなど
この本のいいと思ったところ
- ゴリゴリ学問でないので一般ピーポーには分かりやすい
- 若者へのメッセージがあること
一個人としては主張が一貫しているなと思います。その点は評価できるポイントです。
本書の内容に関連して思ったこと
本書の中で日本と海外では環境社会学で取り扱う分野が異なることに言及していましたが、別にこれはこれでありだと思います。学問として取り扱うことで世間に知られて救われる思案もあるでしょうし、海外みたいにマクロな問題だけ触れる必要はないです。
次は偉そうに筆者に意見します。筆者は原発の闇に触れた上で石炭火力に至っては直接反対側の立場で行動されてきましたが、じゃあどうするのがいいと思っているのか言及されていません。
福島の方には申し訳ないですが、自分はカーボンニュートラルを達成するなら原発は必要だと思っています。大きすぎる問題点があるのは承知の上ですが、
- 太陽光⇨パネルを設置するために森林が開拓されているという本末転倒、パネルの廃棄方法問題
- 地熱⇨まともな候補は大概が温泉地か国立公園で開発できない
- 洋上風力⇨いい場所が限られていてとても主力にはなりえない
こういう側面があるのもわかったうえで原子力も石炭火力も否定なのか疑問でした。石炭火力はまぁいいとして自分からすると福島第一の件は原子力が悪いのではなくて津波対策が杜撰な東電が悪い=東電に原発管理能力がなかっただけの話だと思っているので何も廃止に動く必要はないという理解です。
※宮城の女川原発はリッチ含めて対策ができていたのでむしろ住民の避難地になりました。
この本のおすすめ度と読むのがおすすめな人
おすすめ度は10点満点中6点です。単に自分が期待していた内容と違っていただけなのですが、もう少し環境社会学ではこういうことを深掘りして外部に働きかけをしていますという紹介があるとよかったなと思います。
この本は次のような方が読んだらいいと思います。
- マイナーな学問にも興味のある方
- 学者のエピソード話が好きな方
次読むならもっとゴリゴリ学問なものにしようと思います。
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以上でおわりです。最後までお読みくださりありがとうございました。