この記事のもくじ
この記事では直接的に書籍の内容に触れることはできるだけ避けたうえで、読んでその内容について思ったことなどなど紹介します。
今回紹介する本
『財産消滅 老後の過酷な現実と財産を守る10の対策』です。
老後2000万円問題に代表されるように老後に関するお金の問題といえば
- お金が足りないことが前提
- その足りないお金をいかにして確保するか
この2点に集約されがちです。自分もその前提でどうやってお金を貯めていこうかを計画している結果がFIREシミュレーションとか必要な貯蓄率の算定を調べている動機でもあります。
しかし、老後に関するお金の問題は貯めることだけではないよーそういうメッセージを本書では伝えています。
本書の目的
財産消滅とか財産を守るって言われてもピンとこないかもしれませんが、本書では次のような状況を鑑みて、『誰にでも起こりうる財産消滅への対応策として、実際の事例から導き出された対策』を解説しています。
- 財産の所有者が認知症になるなどして資産を動かせなくなる
- 本人だけでなく、その家族や親族も困ることになりかねない
まだまだ若い人は「自分が認知症になるなんて想像できない」と思われるかもしれませんが、現在でも65歳以上の16%は認知症であると言われており、決して無視できない病気です。(出典:東京都健康長寿医療センター研究所)
本書の構成
以上を踏まえて本書は4章だてで財産消滅しない、させないための方策がわかるようになっています。
- 認知症により「財産消滅」してしまった事例
- 資産を滞留させる蓄財の罠
- 成年後見人制度の問題点
- 今からでもできる10の対策
今からでもできる財産消滅を防ぐ対策一例
制度の部分はかいつまんで書いてしまうと自分の理解も読者さんの理解も中途半端になってしまうので、ここでは本書の最後に書かれている「財産消滅を防ぐための対策」について自分が参考になった!と思ったものを紹介します。
- 健康寿命を伸ばす
- 5年後の目標を持っておく
- 元気なうちに遺言を書いておく
健康寿命を伸ばす
ついつい忘れがち。というか読んでいる方の中には健康寿命という概念を知らない方も相当数いると思われます。ここで簡潔に健康寿命とはなんぞやを説明すると
- 健康寿命=真の寿命(死ぬ年齢)ーサポートを受けて生きる年数
です。
理想をいえば健康寿命と真の寿命がイコールのピンピンコロリ。これなら死ぬまで財産が凍結される心配は要りません。
5年後の目標を持っておく
財産を守ることと目標を持つことの何が関係あるんだ!というご意見に対して著者の考えはこうです。
- 目標を持つことが生きる上でのモチベーションになる
- 長期過ぎると漠然とするし短過ぎると視野が狭い。なので間をとって5年
目標というとハードルを作るみたいになるので、堅苦しくて嫌だというなら5年以内にやりたいこと、済ませておきたいこととしてリストアップしてみるとどうでしょう?これは私見ですが。
元気なうちに遺言を書いておく
元気なうちにやるのってどうなんだろう?
とは思いますが、元気なうちでないと正常な判断ができなくなるので元気なうちにこそしないといけないことです。
かといって20代や30代のうちに書いても結局70代や80代まで生きたら情報の巻き直しもいるでしょうし、相続したい人も変わっているはず。
ここも自分の意見になりますが、遺言とまではいかずとも
- 自分の資産内訳を定期的に棚卸する(➡︎老後資金を計画立てることにも使えます)
- パスワードリストを作っておく
これくらいはしたほうがいいんじゃないかと思います。純粋な金融資産、固定資産の相続も面倒ですが、サブスクや年間払いしているサービスなどは誰もログインできなくなるといつまで経っても解約できずにどんどんお金が消えていくリスクを秘めています。
スマホにあるパスワードの記憶機能で済ませている人もいるでしょうが、自分は年に1回パスワードの確認作業をすることにしています。そうすることで万一のことがあっても諸々の手続きを残された人がやりやすくなると思うからです。
老後は誰にとっても自分ごと
この本でわかること
- 老後のお金問題について、貯める以外からの視点で抱える問題
- 自分と家族が路頭に迷わないようにするための老後の資産管理・諸制度
老後のお金問題と言われたら誰だって「いかにして足りないといわれているお金を工面するか」に焦点を当てがちですが、その工面したお金をちゃんと使える状況にしておかないと一緒です。
本書は後者の観点に振り切った内容になっており、他の本と二番煎じなことがありません。普段は見聞きしない制度や豊富な事例紹介があり、間違いなく読んで得する1冊です。
本書の内容に関連して思ったこと
人昔のそれより現実を見て生きていると言われる若い人ですらこうした問題に見向きしている方を知りません。
本書を読む前の自分も今の状況が一生続くと思い込んでしまっている節がありました。
生きている限り死が全員に訪れるということは老後も例外なくやってきます。これを年齢に関わらず自覚しておきたいところです。
この本のおすすめ度と読むのがおすすめな人
おすすめ度は10点満点中9点です。
この本は次のような方におすすめです。巷の「老後のお金」の本とは一線を画した内容で非常にためになりました。老後が近い方もそうでない方も一読してみると良いと思います。
- 老後のことで漠然とした不安がある
- お金のことは気にしないで生活できる準備をしておきたい