この記事のもくじ
4%ルールの前提は運用資産の7%利回り
不労所得だけで暮らす生き方。これを実現するにはよっぽど非凡な方でもない限り、せっせと節約してせっせと投資する他ありません。加えて投資したお金が働かずに暮らせる金額になるには時間がかかりますし、貯まったとてどうやってそのお金を使っていくかが問題になります。
そんな人のための戦略が4%ルールです。4%ルールは半永久的に運用資産からの儲けだけで暮らせる(なんなら資産を切り崩しているのに資産が増えていく)という夢のような話です。
ただし!
条件があります。
- 米国株式のリターンは年率7%
- インフレ率は年3%
- 引き出せるのは7−3=4%
4%ルール自体は机上の空論ではなくて、少なくとも過去実績ベースで成功率を算定していますがその過去実績は将来のリターンを約束してくれないのが悲しいところ。
しかもその過去実績すら年率7%を毎年毎年残しているわけではなくて長期間の結果を慣らした結果です。ということはある断面で切り取ると7%に達していない時期もあるわけです。
この記事では長期間投資した場合のリターンが過去実績ではどう変遷してきたかを紹介します。
S&P500における長期リターンの変遷
過去の類似記事との違い
このブログではある指数に連動した商品を一定期間保有したらどのくらいのリターンになるか(収斂するか)という情報を紹介しました。
S&P500の場合は以下の記事です。
今回もアウトプットされる情報は一緒なのですが、データの範囲を1990年以降ではなくInvesting.comで採取できる最古の1970年以降まで広げています。そのほうがデータ個数が増えるからです。
投資してからの保有期間は20年のみを考えます。
近年は7%を割り込みがち
このグラフの見方です。例えば「90」のところで8%くらいの年率リターンになってますが、これは「1971年に投資した分=1990年に投資して丸20年を迎えた分のリターン」です。直近の「22」というのは2003年に投資した分の年率換算リターンです。4%ルールの拠り所である「7%」という数字のラインを参考として入れています。
で、見てもらったらわかる通りで近代になるほど20年間保有し続けた場合の年率換算リターンが下がっているのがわかります。「線形」の縦軸を使った場合の株価推移がこんな感じでここ10年くらいは急峻に値上がりしているのを見ると少々意外な感じもします。
でも同じ20年で「100」増えるのでも元々が100だったところから+100で200になるのと元々1000だったところから+100になるのでは当然前者の方がリターン(%)としては大きいことは理解できます。
S&P500は右肩あがりですが、このグラフではここ1〜2年の傾きが少々急峻なくらいで、それを除けば同じ傾きです。ということは%としては小さくなるのは当然です。
確かに年率換算リターンの平均は7%台だが・・・
続いて年率換算リターンの分布を見ていきます。20年持った時の年率換算リターンは何%になることが多いかというとこのヒストグラムの通りで、6〜8%台が多めです。
これの平均値は7.6%でした。なので従来知られている「米国株式の年率リターンは7%」というのは嘘ではないと納得です。ただ、毎回7%かというとこのグラフの通りそうではありません。上振れする分にはいいですが最も頻度が多いのは6%台ですし、最悪の場合は20年間持っても年換算したら3%もないケースが存在しています。
最初に提示したグラフを見るとどんどん年率換算リターンは減少傾向にあるように見受けられるので2%、3%問いうのは悲観的が過ぎるかもしれませんが「米国株式はこれからも7%伸びるんだ!」というのも楽観が過ぎるかなぁというのが所感です。
せっかく予測をするなら悲観的に
最悪を想定して最良に期待する
という言葉があります。
自分は常々心がけていますし、折に触れてこのブログでも口すっぱくいってる(つもり)のですがどうせ何か将来の予測をするなら悪い側の予測を基準にしといた方がいいと思います。
「7%伸びるんだ!」と思って3%とか4%しか伸びなかったらショックですが最初から3〜4%しか伸びないと思っておけば「まぁこんなもんよな」という割り切りができるからです。
悪めに予測して上振れした分は好きに使えばよし
悪めに予測をするということはある資産額の目標を立てるときに長期間が必要そうだとかたくさん貯金しなきゃという前提になるわけですが、別にその悪めの予測通りになるわけではありません。
本当に悪めの予測通りなら損をしなくて済みますし、悪めな予測よりもリターンが良くなったらその分は泡銭ということで好きに使うなりなんなりすればいいだけですからね。実際、自分個人はFIREシミュレーションをするときには年率3%で仮定しています。
米国株式がここ10年くらいの伸び方をずっと続けてくれると思っているなら今回紹介したグラフを目に焼き付けて、米国株への期待を一歩引いて見るといいでしょう。