この記事のもくじ
今回紹介する本
『SDGsは地理で学べ』です。
SDGsについてはこれまで何度も取り上げていますが、改めて定義を確認しておきましょう。
- Sustainable Development Goals「持続可能な開発目標」の頭文字
- 2030年を達成期限とする17のゴール、169のターゲット、232の指標で構成されている
- 17のゴールは以下の通り
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任 つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
SDGsのバッジをスーツに着けている方をよく目にするようになっており、ここ1〜2年で概念は広まってるなと思います。行動が伴っているかは別として。
さて、これは全世界での取り組みですけれど国単位でどうかが定期的に評価されているようです。本書のまえがきでは「Sustainable Development Report」が紹介されておりまして、日本の評価は全体で19位ですが過去からランキングを落としていることからよろしくない状況として紹介されていました。
ただ上位は北欧3カ国はじめ、いかにも「経済的には大して発展してないけど環境にいいことやってそう」な国がランクインしてます。G7(カナダ、フランス、ドイツ、イギリス、日本、アメリカ、イタリア(+EU)のくくりでいうとドイツ(6位)、フランス(7位)、イギリス(11位)の次なので、そんなに悲観しなくてもいいんじゃない?と自分は思います。
※ちなみに世界って192だかの国があるのになんで163なのかはよくわかりません。そこは興味なかったので、気になる方はぜひ調べていただければと。
いきなり本書の位置付けですが、SDGsはさまざまな地域の事情があって炙り出されたゴールといえます。つまり地理の観点から課題に触れていくといいんじゃない?というのが地理講師である著者の考えであり、それに基づいて執筆されています。
- 環境問題は国境を越える
- 人権を守るとはどういうことか
- 経済成長は世界に平和をもたらすのか?
日本とヨーロッパの「コンパクトシティ」構想の違い
2015年3月の国土交通省 コンパクトシティの形成に向けてではこのように述べられています。SDGsなんて言われてなかった頃に「持続可能」という単語が入っているところは日本らしからぬ時代先取り感がありますね。
- 限られた資源の集中的・効率的な利用で 持続可能な都市・社会を実現するために必要な構想
- 「都市機能誘導区域」と「居住誘導区域」を設ける
現在、日本でコンパクトシティとして知られているのは北陸地方にある富山県の富山市です。ゴリゴリの地方でthe田舎、自動車社会という印象がありますが、市内電車や現在宇都宮で開業に向けて進められている「LRT」がすでに導入されている街です。自分も行ったことありますが、ひっきりなしに電車が行き交っていてまるでヨーロッパ。今は駅を横切るようになっていて新幹線を降りたらすぐに乗り場がある状態。「この部分だけ近代感あるな」と思った記憶があります。
まちづくりという観点では、このコンパクトシティがまさに上記資料の通り「持続可能」に直結しそうですし、日本国内でもこれを志向しようとする自治体が出始めています。
が、コンパクトシティの発祥であるヨーロッパにおける狙いとは少々事情が異なります。まずヨーロッパの場合は
- モータリゼーション(=自動車社会)への対策として
- 公共施設などを都市中心部に集約して
- 環境負荷の小さい交通機関を整備する
のが狙いでした。日本、それこそ先ほど紹介した富山市も同じことはやってますが、これに加えて
- 都市部の再生
- 地方自治体としての財政負担の軽減
- 高齢化対策
- 自然災害対策
こういう事情もあります。環境のため、というよりは消滅可能性都市なんて言葉があるように街が消えるかどうか見たいな情勢にあって「都市機能を今のうちに集約させとこう」という意味合いで志向しているということです。
もちろん、個人個人が住む場所は自由です。ただ、自由だからといって自治体が何でもかんでも面倒を見てくれる時代ではなく「好きなとこ住んでもいいけど、街のちゃんとしたサポートを受けたいなら都市中心部に住んでね!」という時代だと考えておくべきかと思います。好きなところに住みたい、でも面倒は見てくれというのは都合が良すぎるということです。
まぁ、日本はもともと海外と比べると平野が少ない分、最初っからコンパクトシティな気もしますけど、これをきっかけに公共交通が整備されて自動車が減ってくれたら個人的には嬉しいです。
SDGsはミクロ単位でもやらないといけないこと
本書の切り口は地理、まさにマクロ的な視点です。また、SDGsという言葉を使っている主語は国だったり企業だったりするので、SDGsを達成するための行動をとる主語も同じかと思いたくなりますが、個人単位でも達成に向けた行動が求められています。
「地球温暖化なんてデマだ。だから俺はガソリン車を使い続ける」みたいな意見をいうのは自由ですが、残念ながら国連をはじめ全世界でオーソライズされてしまった目標なので、守らないといけません。守りたくなければかつて第二次世界大戦に向かっていった日本のように国連、ひいては日本という枠組みから離れて生活したらいいと思います。
自分が公共交通大好きなのも一応はコレを意識しているからですし、生活そのものが持続可能になるようにという心がけはしています。本書の内容だけだと「コレは自分には関係ない」と思うかもしれませんが、それとこれとは別です。本書で背景を掴んでいただいて、行動はきちんとすることが求められます。