【2023年読書レビュー041】2040年の日本

「今」を知って「未来」に備える

『2040年の日本』を紹介します。


このブログでは類書として「日本の構造」とか「なぜ、日本人の9割はお金持ちになれないのか」も紹介しております。GDPとか生産年齢人口とか世界における日本の立ち位置をデータで見て、そこから現状なり将来を予測するという内容です。

本書も同じです。タイトルに2040年とありますが、テクノロジー(自動運転とか核融合発電とか)に関することは2030だろうが2040だろうがそんな確度よく見通せるものじゃないので、数字は気にせずに「要は超長期将来としてはこういうものが出てくるんだろうな」と解釈するにとどめておくのがおすすめです。

ただし、マクロな話は別です。例えば1年後の人口がどうなるかは未知数ですが、10年後、20年後の人口がどうなるかというスケールだとかなりの確度で当たると言われています。そういったマクロな指標がどうなるのか、その上で将来どうしていけばいいのかを考えるきっかけになるのが本書というわけです。

少々悲観がすぎる著者の見解

本書のほとんどが「将来の〇〇はどうなるのか」を論じています。1章が経済情勢、2章が世界の中の日本、3章が医療・介護負担・・・と続いていきます。

世の中、それが全てではありませんが大概のことが解決するという点ではお金が重要。で、お金にかかわることといえば日本の経済です。日本がいくら成長していくのか、生産年齢人口はどうなっていくのか・・・、こういった観点での予測を元に他の政策の目標なども決まっていってます。例えばGPIFの運用利回りも”ある人口増減である経済成長率だったら財政がこうなるから〜”という前提で目標が決まっていることは知られているところです。

現状、日本はほぼゼロ成長な中で向こう10年間の経済成長が

  • 成長実現:2%越え
  • ベース:1%程度

を見込んでおり、GPIFの運用利回り目標は成長実現の方が前提になっています。

で、ここに異論を唱えているのが著者です。なぜなら2010年ごろに同じように経済成長の予測をした時の悲観側シナリオの経済成長すら実績としては達成できていないから、「それで成長実現のケースになるわけないだろ!」「なのに成長できますという前提で話を進めるのは将来に対する責任放棄だ」という主張です。

著者が労働参加率とか技術進歩を考慮して弾いた数字だとがんばって1%、普通でプラマイ0という成長率が妥当だと言います。そして、それを前提として種々の政策を決めるべきだということです。

実績がそうだというのは著者の言うとおりですし、実際、物価の2%上昇すら達成できてなかったのに経済成長2%いけます!と言うのはかなりの無理筋だなと自分も思っています。

他方でシミュレーション時点で「もう日本は1%しか成長できません」と政府が公言するわけにもいかないでしょう。それをやったらやったで「1%しか成長させる気がないんか!」と批判が来るでしょうし、ぶっ飛んでない程度に目標は高めにおいといて、それに向かって頑張ると言う方がいい結果にもなると思います。

その点で著者はシミュレーションではいい数字を使うから実態が読めないとしていますが、「かといって悲観しておいて解決する問題でもないやろ・・・」とも自分は思います。特に年金財政の話で言えば、経済成長もしない、労働参加も進まないという悲観的な予測のもとで所得代替率がどうなるかの数字は提示しているわけですから、決して無責任ではないと思います。

「もう成長しません(させません)」と言い切ってしまうのも無責任だと思いますがいかがでしょう?

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