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悪い円安>いい円安の現在
『悪い円安 良い円安』を紹介します。
去年がっつり円安が進んでからというものの、タイトルにある「悪い円安」「良い円安」という言葉をよく聞くようになりました。最近では「円安も円高も「一長一短があるのだから為替に良いも悪いもない」なんて意見も聞かれます。少なくとも今は「物価は上がって給料は変わらない」という状況なので良い円安だと思っている人はそんなにいなさそうですが。
本書で解説されているのは以下2点です。
- 現在の円安が「悪い円安」と呼ばれる理由
- 円安を「いい円安」にするための政策
今回の円安が悪い円安になっている理由
円安の枕詞に「いい」「わるい」の2つが共存するのは見方によって良く映るか悪く映るかが変わるから。では今回はどうかというと「悪く」映っているわけですが、その理由はなんなのか。本書では次の2点を指摘しています。
- 原油価格上昇がセットで発生した
- 日本としての経常収支構造が変化した
1点目について、21世紀の原油先物価格(WTI)とドル円チャートを重ねたグラフはこの様になっていて、確かに円安と原油価格高騰がダブっていることがわかります。原油価格が上がるとガソリン代はいうまでもなく、物を運ぶためのコストも増えるから輸入関係では例外なく影響を受けてしまうところが辛いです。
2点目は具体的に何を指しているかというとこれまで輸出が減り、輸入が増えていることです。一つの国の国際収支を考える上で6つのステージがあるそうで日本はすでに貿易やサービスでは赤字になっているけど第一次所得収支(海外への投資や子会社からの配当など。つまりはおこぼれ的な利益?)で相殺してなんとか黒字という状態。なおアメリカやイギリスは経常収支自体が赤字という最終ステージに到達していて日本もここに行き着くことが懸念されています。
日本のウィークポイントは自前の資源が乏しいこと。否が応でも輸入に頼らないといけないものがある中で為替が円安がわに触れようもんなら常に今みたいな値上がりは不可避になります。これってもはや構造的な問題なので誰が悪いという類ではなく、「じゃあどうしようか」を中心に考えざるを得ないでしょう。
いわゆるコストプッシュインフレなので給料が爆上げするでもなし、なおのこと資産運用の必要性が高まっていると言えるでしょう。このタイミングでNISAが拡充することになったのは不幸中の幸いと言えるかも。