この記事のもくじ
今までは毎月読んだ本をまとめて紹介していましたが今月からは1冊ずつ紹介します。直接的に書籍の内容に触れることはできるだけ避けたうえで、読んでその内容について思ったことなどなど紹介します。
今回紹介する本
『リニア新幹線と南海トラフ巨大地震 「超広域大震災」にどう備えるか』です。
筆者は神戸大名誉教授で地震を専門とする学者さんです。なので、地震のメカニズムやリニア中央新幹線の地震に対する安全性についての主張は非常に専門的であると感じました。
書籍の構成
本書は南海トラフ巨大地震が遠からぬ将来やってくることを前提にしたときにリニア中央新幹線を建設することが本当によいのか疑問を呈する1冊です。
- リニア中央新幹線の建設の経緯
- リニア中央新幹線の地震に対する危険性
- 巨大地震による建造物の損壊リスク
- もしも南海トラフ巨大地震が発生した場合の想定
- 脱炭素社会とリニア中央新幹線の関係
- これからの日本と地震
- これからの地震への備えかた
- リニア中央新幹線に対する筆者の考え
最近はニュースにもなっていないですが足元は静岡県を横切るルートにある大井川の水源問題で折り合いがついていないので工事が進んでいません。
個人的な興味として2027年予定としていた開業時期がいつになるのか気になっています。
書籍の気になった内容を一部紹介
本書の中で最も印象に残ったのは第5章です。5章からは各論というよりは全体論の中でリニア中央新幹線を評価しています。5章は地球温暖化対策を考えたときに果たしてリニアってエコなのどうなの?という疑問に筆者の意見があります。
具体的にはこんな感じです。
- 品川ー新大阪間が開業したら原発一基分もの電力が必要
- 速度と出力の効率を考えたときにリニア新幹線はほかの電車、鉄道よりも劣後
- 新幹線の6倍、飛行機の半分ものCO2排出量があり、全然エコじゃない
上に書いていませんがJR東海がオフィシャルな数字をだしていないことは自分も乗り物別のCO2排出量を調べたことがある過程で知っていたので何でだろうなとは思っていました。
ただ感想のところで書きますが、リニアに関する電力消費、CO2排出の試算をもってエコではないから作らん方がいいとするのはいかがかなと思っています。
感想などなど
この本のいいと思ったところ
- 地震の専門家視点でリニア中央新幹線の問題点に触れていること
- あるべき街づくりにも言及している
前半は地震のことに特化して、後半は社会づくりに特化しているので話がごちゃになっていないにも読み進めによい理由の1つです。
本書の内容に関連して思ったこと
筆者の意見に同意なのは、モノで溢れかえった経済・社会からモノがなくても成立する社会にすべきというもの。ただし自分の場合は資源の浪費をなくす意味でですが筆者からは資本主義経済自体に否定的なニュアンスを感じました。
1点申し上げたいのはリニア建設を否定する理由に環境負荷を持ち出すのはナンセンスではないでしょうかということ。
本書ではリニア中央新幹線の消費電力は新幹線の6倍、航空機の半分と言及しました。これは二酸化炭素排出量ではないですが、下図にあてはめると新幹線と航空機の間に来るでしょうか。
確かに新幹線より消費電力が高い乗り物をわざわざ作る(しかもリニアを走らせるのに必要な超伝導という状態にするのに液体ヘリウムという貴重な資源を使うことへの懸念もあります)のはおかしいように思いますが、
それをいうなら飛行機を飛ばすことも、もっというと田舎で一人一台みたいに自動車を走らせていることにも言及すべきでしょう。
リニアで品川ー新大阪ができたら羽田ー伊丹間の航空機は全廃させれば排出削減になると思いますが、そういう提言はないんでしょうか。自動車もバンバンガソリン車を作りまくるのをやめましょうとか言ってれば納得だったのですが、ここはかなり偏った意見を出してるなと思いました。
しかも地震と関係ない話を持ち出してくるあたり、リニアを否定するありきで話をしているように思いました。ちなみに自分はリニア肯定派です。これから人口が少なくなって災害も増えるでしょうから都市間輸送の基盤は高めたほうがいいという考えです。
この本のおすすめ度と読むのがおすすめな人
おすすめ度は10点満点中7点です。
地震の話だけで止めといてもらったらタイトルに沿った内容として完結したのに、リニアを否定したいのか街づくりや地球温暖化の話だけ出し始めたので余計かなと思いました。
この本は次のような方が読むのにぴったりと思います。
- リニア中央新幹線について詳しく知りたい方
- 将来のまちづくりに興味がある方
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以上でおわりです。最後までお読みくださりありがとうございました。