この記事のもくじ
この記事では直接的に書籍の内容に触れることはできるだけ避けたうえで、読んでその内容について思ったことなどなど紹介します。
今回紹介する本
『「色のふしぎ」と不思議な社会 2020年代の「色覚」原論』です。
実はこの本、色ってなんで見えるの?みたいな話が知れると思って購入したのですが実際は全く違いました^^;
色の識別がつかない方のことを色盲と呼びますが、本書はこの色盲の方に関する話が主題です。
日本だと男性は4.5%、女性だと0.156%の頻度で先天的に色盲異常を抱えた方がいらっしゃると言われています(出典:厚生労働省 2.色覚障害者の実態の把握)。
本書の著者自身、先天性の色覚異常を抱えている立場から色覚異常を持った方への差別的扱いに警鐘を鳴らし、多様かつ連続的な取り扱いをしてほしいという主張がなされています。
本書の構成は以下の通りです。
- 色覚に関する過去と現在ー昔は学校で色覚検査がなされていたが廃止になった歴史
- 色覚検査をすることでの影響ー筆者が過去実施されてきた歴史から感じる2つの恐怖
- 動物の色覚の発達の歴史ー細かいものも含めると「色覚異常」はたくさんいる??
- 人間が色を読み取る仕組みー光を目が感じてから脳が処理するまで
- 色覚検査の方法ー石原式、アノマロスコープ
- 色覚異常を炙り出すことの問題点ー見つけたところで治療法はない
自分が知らなかった色覚のあれこれ
期せずして、期待していた内容と全く異なる主題の本を読んだわけですが色々知るきっかけとなりました。
具体的に本書で始めて知ったものは以下のものです。
- 「色覚異常」が優生思想の対象としてあがっていた
- 軽微なものを含めると全体の40%は色盲?
- 色は主観的な概念
- 昔は青色と水色が同じグルーピングだった
- 病気における諸検査のように誤判定が発生する
明確に色覚の検査をした自覚があるのは自動車学校入る時の検査だけで全然馴染みありませんでした。
色が主観的な概念というのはいう通りだと思いました。カーキ色といったら緑色をイメージすることもあるしベージュをイメージする人もいます。第一、洋服を売っている側すら同じカーキと言っといて蓋を開けたらどちらが緑色側のときもあればベージュ側のときもあるくらいですから。
ほかに色の見え方が違う例としてこれも有名ですよね。
これが違う色に見えたら色覚異常かというとそれは超違和感あります。
過去の歴史からの学び
この本のいいと思ったところ
- 自分の主張への対立意見も想定されている
- 当事者の意見だから言葉が重い
自分は色覚検査を学校でしたことがないので筆者がどう大変な思いをされてきたのか知る術はありません。ただ、読んでいくと「ここはだめだな」「こうしてればまだよかったんじゃないか」と思うことがあります。
自分が思った色覚検査の問題点
学校では視力や聴力の検査があり、結果に応じてメガネを使ったり、補聴器を使う方もいるでしょう(補聴器を使っていた方は自分の場合いませんでしたが)。
色覚の場合はどうかというと本書を読んだ限り検査をするだけで後の処置は一切なし。治療法がないからです。
治療法がないのは仕方ないとして、学校ひいては社会としてサポートする仕組みがなかったこと。
これが大問題だと思います。
学校生活や授業を受ける中で支障があるような色覚なのであれば模様を使うとか文字で明記できますしそういう形の補助はあって然るべきです。対処しないのに炙り出すだけなら筆者がいうように異常者をとっ捕まえようという思考となんら変わりません。
この本のおすすめ度と読むのがおすすめな人
おすすめ度は10点満点中8点です。
この本は次のような方が読むのにぴったりと思います。
- 色覚という言葉を知らない
- どんなふうに人が色を見ているのか知りたい
期待した内容とズレたと冒頭書きましたが、一応人が色を認識する仕組みは知れたので結果オーライです。