この記事のもくじ
今回紹介する本
『危機の読書』です。
2年ほど前、自分は毎週経済誌を楽天マガジンで読んでいました。その時にどの雑誌だったか忘れましたが、定期で読書レビューを出している方が著者である佐藤優さんです。レビューの内容もそうですが、かなりハードな社会問題に対して、ゴリゴリと意見を放っている切れ味鋭い方と言う印象です。最近がんを患っていることを公表されていた記憶がありますが、どうやら元気そうで一安心です。
この本を書くことになったきっかけが、2020年からの新型コロナウィルスの感染拡大です。先人が唱えていた「人類は疫病克服した」と言う意見が幻想である、この危機に直面したためです。本書ではその時々の目の前にある危機を解決することを真剣に考えた知識人たちの言葉を取り上げた形式になっています。 レビュー論文なるものがあるように過去の先人が認めた本のレビュー本といったところでしょうか?。
- 天をうやまい、人を愛する
- 歴史はそのままの形では繰り返さない
- 秘密は死んでも守り通せ
- コロナ禍と国家論
- 教養としてのインテリジェンス小説
- マルクスは甦る
国家はなくてもいい??〜国家と社会の関係性〜
コロナが始まるまでは耳にタコができる位グローバルと言う単語がよく世の中を賑わせていました。世界で活躍できる人材になれるかどうかみたいなことがもてはやされ、こと日本に関してはインバウンドによる観光業の盛り上がりもありました。
ところがコロナが始まって以降は、グローバルとは真逆の方向になり 日本国内のレベルでも都会から地方への回帰を検討するような動きが進んでいました。加えて、足元のロシアによるウクライナ、侵攻の影響で、各種メーカーも考慮に戻そうと言う動きがありますね。こうした世界の動きの変化の中で、国家と社会の関係性について本書の中で言及されています。
- 家のあり方によって、国家のあるなしが変わる産業社会の場合には、国家は存在する
- しかし、理論的には国家はなくても良いことになっている
- アフターコロナでは家にとどまっていることが多くなった分、母国語を使う機会が増えることで、自らの国、自らの民族に対する帰属意識を強めるきっかけとなる
自分の国が大事と言う考え方は、すでに欧米では広がっているように感じられます。その点で著者が述べている国家のあり方、社会との関係性と言うのは、既に実現しているものを表現しているに過ぎないのかもしれません。
これまでの当たり前は、これからの当たり前ではない
最終章では資本主義に関する記述もちょろっとあります。脱成長と資本主義が共存しないという趣旨です。
新型コロナウィルスの拡大をきっかけに、これまでと”当たり前”が変化しました。テレワーク、マスクの着用。グローバル化から自分の国を第一優先主義。加えてビットコインのような暗号資産は既存の通貨を置き換える存在になるかもしれないし ベーシックインカムが始まれば仕事と言う概念がまるっと変わるかもしれません。
これまでの当たり前は、これからの当たり前ではないと言う意識が、人生100年時代を生きる上で重要な考え方になりそうです。