この記事のもくじ
この記事では直接的に書籍の内容に触れることはできるだけ避けたうえで、読んでその内容について思ったことなどなど紹介します。
まえがき
今回紹介する本
『超入門デジタルセキュリティ』です。
自分の親の世代であれば働き始めた頃にようやく携帯電話が出回るようになり、自分が学生の頃は高校生になればガラケーを大体の人が持つようになっていました。
それが今となっては小学生ですらスマホを持つ時代です。一部ずっとネットに縁がなく、これからも触れるつもりのない高齢の方を除いてはほとんどの人がネット、デジタル社会と繋がった生き方をしています。
子供に使わせる親であればセキュリティソフトの導入など対策をするでしょうが、それでも安全な使い方ができるかどうかは最終的には使う個人個人のリテラシーに依存します。
自分はその辺気をつけているつもりですが、所詮は「つもり」ですしDXとかAIとかデジタルに関する分野がトレンドの今だからこそ抑えておきたい知識だと思い読むことにしました。
この本の前置き
著者は警察庁からインターポール=国際刑事警察機構に在籍していたことのある方です。正式には
でICPOと言われることもあります。個人的な話をすると漫画デスノートでICPOを初めて知った(その時は実在する組織とすら思ってなかった)のですがこれを読むまでインターポールと言う呼び方があるのを知りませんでした。
著者はインターポールでサイバー分野を担当されていたようで、それが本書の執筆につながっているのでしょう。
著者が紹介しているデータがあります。国内における犯罪の認知数とサイバー犯罪の件数です。著書では2002年と2020年のデータしかなかったので以下に他の年も追加しました。
全体の犯罪件数はe-statの「犯罪統計」から、サイバー犯罪の件数は警察庁 サイバー犯罪対策プロジェクトの発表資料から引用しました。
ご覧の通り、全体の犯罪認知数は減少傾向ですがサイバー犯罪は右肩上がりです。
相対的にサイバー犯罪の割合が高まっており、犯罪に巻き込まれるとしたらサイバー犯罪という時代がそこまできているのです。
本書の構成
そこで本書はどうやってセキュリティーを確保するかというハウツーの前段階としてデジタル社会の実態がわかるように国際社会の中での安全保障やデータセキュリティに関して理解が深められる構成となっています。
- デジタル社会におけるセキュリティ上の問題点
- 世界におけるデジタル分野の勢力関係
- 日本が晒されているサイバー危機
- 著者がデジタルセキュリティに関わるまでの歴史
- アメリカと中国の覇権争い
デジタルデータを使った活動における日本の現在地
デジタル敗戦ー日本の現状実力
本書ではアメリカと中国が積極的な活動をしている一方で日本は立ち遅れていると指摘しています。
具体的にはこの1〜2年だけでも
- 新型コロナウイルスの接触確認アプリCOCOAの動作不具合
(厚生労働省 接触確認アプリ「COCOA」の不具合の発生経緯の調査と再発防止の検討について(概要)) - 10万円の特別定額給付金の給付遅れ
最も2点目については半分ほどは日本国民自体のせいだと思います。
だって、普段は「個人情報保護ガーー」「資産から税金を取るに違いないんだ」と言って口座情報の登録がなされることに反対したりマイナンバーカードの発行を面倒くさがっておいて、こういう時にマイナンバーカードを持っていない人は紙申請と知って「事前に発行させておけばよかったのに」って都合良すぎでしょう。
さて、こんな状況を前デジタル担当大臣の平井氏はデジタル敗戦と呼んでいるそうですが、これは以下のランクでも現れています。
- 国際サイバー能力指数・・・9位(1位はアメリカ、2位は中国、3位はイギリス)
- サイバーセキュリティの取り組み状況・・・14位(1位はイギリス、2位はアメリカ、3位はフランス)
まぁ、予想通りと言ってもいいでしょう。
著者はデジタルセキュリティの遅れが経済にも影響しうるとしています。国として実力がないけど別にいいんだ!ってことにはなりません。
どうやって自分のデータを守る?
分からないものには踏み込まない
日本という国全体としてのデジタルセキュリティの実力が弱いってことは必然的に国民一人一人の生活にも関わってきます。
著者は本編の最後で「このネット空間には〜(中略)〜到底追いきれないリスクを抱えてまで、踏み込むべきではない地域、分野があること」を知って欲しいとしていますがまさにその通りです。
どんなサイトかわからないけど使ってみる、便利そうだからアクセスしてみるというのは危険そのものです。というか知らないものには基本手を出さないのが肝です。投資もそう、食事もそう、買い物もそうです。
手を出すにしたって知ってからじゃないと大概後悔する元になります。
加えて、常に情報は筒抜けになっているという意識
これは私見ですが、まずはこの意識を持っておくだけでも随分変わると思ってます。
- YouTubeでおすすめの動画が表示される
- Yahoo!やGoogleで自分が住んでいるエリアや検索したことに関する広告が出てくる
これって全て情報が抜けている一例です。それを何の気無しに「なんか自分が欲しい情報が出てくるなぁ」と思っているようならかなりマズいです。
セキュリティソフトを入れる入れない以前の話ではないか、というのが自分の考えです。
あとがき
インターネットは世界中でつながります。国境はありません。
ですから日本の現状だけではなくて海外の現状もセットで知っておかないと意味がない話ですが本書は海外の事情が詳しく書かれていて好意的に受け止められました。
ネットで飯を食おうが食わまいが、この時代に生活する時点でデータとかデジタルとかネットには触れないわけにはいかなくなっています(全部アナログでやるんだ!というなら別ですが)。
- ITとかネットとかデジタル〇〇について全然知らない
というかたが読むとデジタル社会で悪影響を被らずに生きていくための第一歩が踏み出せると思います。