「資産」所得倍増プランということは・・・?

ひと昔前だと所得倍増計画

骨太の方針の中に資産所得倍増計画

こんなニュースがありました。年末に向けて資産所得倍増計画を立てるというものです。

【速報】岸田政権初の「骨太の方針」が閣議決定(TBS NEWS DIG Powered by JNN) – Yahoo!ニュース

岸田政権として初となる 経済財政運営の指針、 いわゆる「骨太の方針」が さきほど閣議決定しました。 岸田総理 「(資産所得倍増について) 複数年度にわたる具体的な プランを今年中に策定し、 実行致します」 「骨太の方針」では「人」や「イノベーション」などに重点的に投資するとしています。また、個人の金融資産を貯蓄から投資に向かわせるため、「資産所得倍増プラン」を年末までにつくる予定です。 …

令和版の所得倍増計画ということは・・・?

岸田首相は総裁選の時に「令和版所得倍増計画」なるものを打ち出していました。令和版ということは本家があるってことです。じゃあ本家っていつかというと60年前の池田勇人内閣の頃のお話です。

本家の所得倍増計画の概要
以下はウィキペディアの受け売りです。
  • 1960年に池田勇人内閣で策定された計画
  • 主に輸出増加で国民総生産を10年間で倍にするというプラン

こちらは「資産」所得倍増プランです。わざわざ資産がついているってことはどういうことか、自分で噛み砕いて考えれば明らかです。

「資産」所得倍増なら楽に達成できると思う理由

大多数の人の資産所得はほぼ無きに等しい

資産所得に関する統計を自分は知らないので定量的に提示はできません。しかし、日本証券業協会が毎年実施している「証券投資に関する全国調査」では個人が保有している資産の割合がこのように出ています。

預貯金以外のリスク資産を複数で持っている人が誰もいないと仮定してもいわゆる投資をしている人の割合は28.9%です。そんなことは現実あり得ないのでもっと少ないでしょう。

資産所得とは株式や投資信託からもらえる配当、預貯金からもらえる利子を指しています。上述の事実からすると大多数の一般庶民は

  • 預貯金しかしていない
  • つまり現在の資産所得は以下の仮定で年間約800円
    • 預貯金100万円
    • 普通金利0.1%(税込)の優良なネット銀行に預けている

ということになります。

超少額でも配当がもらえるものに投資した瞬間資産所得は倍増

資産所得を倍にするなら

  1. 投資元本を倍にする
  2. 運用利回り(配当・利子の利率)を倍にする

必要があって、すでに100万円とか1000万円も資産所得があるような人だとどちらもハードルが高いです。めちゃくちゃ稼ぐか、リスクを取って利回りの高い商品に乗り換えないといけないからです。


ところが、もともと投資をしていないような人だったら簡単です。先ほどの年間800円の方の例をそのまま使えば預貯金100万円のうち10万円を配当利子の利回り1%の金融商品に投資すれば先ほどの年間800円はおおよそ倍になります。

投資したことがない人からしたら利回り1%って危なそうに思えるかもしれません。自分もそう思ってました。ただこのハードルを達成するだけなら

  • 優良な会社の債券を集めた投資信託(例:AGG、BND)
  • 長期的には商品の値上がりも期待できる「インデックス」連動の株の投資信託(例:VOO、VTI、VT)

ここらへんに投資すればクリアできます。投資の世界ではかなり安全側です。

ここまで言われて「こっちが要求しているのはそういうことじゃない!」と思われるかもしれませんが資産所得倍増しているのは確かです。

それ以前の問題点

報道を見る限り、「将来」の「資産」所得倍増を想定?

ニュースを色々見ていると資産所得倍増のための施策として以下のようなものが紹介されています。

  • iDeCoの加入年齢引き上げ
  • NISAの恒久化

これ、いますぐ資産所得を倍増にするのではなくて超長期の将来の資産所得を倍増させればそれでええやと日本政府が考えているのではないかと自分は思います。なぜならiDeCoは60歳から、NISAは非課税期間をMAXで利用するなら投資した20年後じゃないと引き出せないからです。

いま生きている人たちは目先の収入や家計で困っているはずなのに「今すぐ所得は増えないけど将来の所得は増えるような制度設計にしますよ」というのは別に悪いことじゃないし歓迎しますが近々の経済対策としてはベクトルを間違っているように思います。

そもそも将来の資産所得倍増だとしたら基準はどこなのかという問題もありますし、結局今困っていることに対して問題を先送りにしてうやむやにしてる感が否めません。

あとがき

総裁選の頃に自分が聞いていたのは、企業が従業員に対して給与の引き上げという形で還元をするなら法人税の優遇をしますよ、という内容でした。これって日本政府としても税収が丸々消えるわけではなくて

  • 法人税は減る
  • でも個人の給料は増えているので、その分所得税と住民税(なんなら社会保険料)は増える

ということである程度の税収は確保できる見立てがあったのだろうと思います。が、やめたということは流石に倍にするのは無理があることを自覚したのか、はたまたビタ一文でも税収が減るのを嫌がったか、それとも超簡単に達成できる「所得倍増」だったら成果アピールが容易だからチョイスしたのか・・・。

個人的にはこのレベルだったら政府に言われたから、推奨されたから・・・ではなくて自分で考えて実行しておいて「今の給料とかそれに基づく資産額だと、資産所得を倍にするには投資元本を倍にするしかないんです!だから給与所得が増えるような政策をお願いします!」と言えるくらいの水準にはしておいてほしいなって思います。

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