この記事のもくじ
まえがき
幻冬社ゴールドオンラインでこんな記事がありました。執筆者は確定拠出年金の界隈ではプロ?と呼ばれている方らしいです(確かに色々検索すると名前はよく出てくる)。
少子高齢化でも年金は「減らない」。これまで聞いてきている話とは何か違う感じがしますが、詳細を読んでみるとなるほどそういうことかというのと「でもそれはちょっと違うんじゃない??」と思うことがありました。
額面が増えている≠年金は「減らない」
この記事では年金が減らないと言えるわけを次のように述べています。
- 年金支給額は物価に連動して増加している
- 年金を支払う側の人間も増えているので影響していない
- 所得代替率が減っていくことと年金が減ることはイコールではない
一見、「そうか!」と思いたくなる書きっぷりですがよくよく考えると「やっぱりそれはおかしいやろ!」という感想に行き着きます。
年金支給額は物価に連動して増加している⇨そういう制度です
この表現から察するにですが、この記事では「額面=数字として減っていくのかいかないのか」という観点で論じられているように思います。その点で言ったら確かに年金支給額は増えていると言えるでしょう。でもそれは物価上昇率(厳密には賃金上昇率も一因子ですが)に応じて決まる仕組みになってるわけで、かつ、物価は資本主義経済においては程度の問題こそあれ上がっていくものです。つまり
数字として増えて当たり前です。相応に知っている人なら数字として減るかどうかを問題にしている人はいないはず。
年金を支払う側の人間も増えているので影響していない⇨ベースは上がっていくんだから当然
この点も1点目と同じ話だと思っていますが、年金受給者一人を支えるための現役世代の数(ここでは年金を払っている側の人間とします)が減っているのは事実です。じゃあなんで年金支給額が増えていくのかといえばこの2つくらいしか理由にならないでしょう。
- 物価に合わせて上がるようになっている
- 国民年金だけ払っていた人と厚生年金保険料も払っていたひとで受給額が違うのも当然
この辺から、なんか論点ずらしてきているなぁと感じていました。
所得代替率が減っていくことと年金が減ることはイコールではない⇨問題はそこじゃない
所得代替率が減っていくであろうことは年金財政の検証資料にも書かれていることなので、確実と言って差し支えないでしょう。で、これで3回目ですが、額面の金額は物価に応じて上がるんだから所得代替率が下がることとは一切関係ありません。
年金の受給水準について疑問視、不安視している人が何に対して疑問を持ったり、不安を抱いているのかといえば
- 年金をもらえる年齢が上がっていくであろうこと
- 物価の上昇ほど年金は上昇しないこと=年金でまかなえる生活費の割合が減少すること
この2点でしょう。物価の上昇ほど年金は増額させないというのはいわゆるマクロ経済スライドによるものです。数字はただの仮の数字ですけれど
- 物価が3%下がったら年金は3%下がる
- 物価が5%上がっても年金は5%もあげない
という趣旨の制度です。そしたらどうなるかというと
- 今の年金生活者:生活水準Aで生活費100。年金は50。残りの50を自分でなんとかする(時給1だとしたら50分働けばいい)
- 将来の年金生活者:今と同じ生活水準Aだけど物価上昇で生活費200。でも年金は100、ではなくてそれいかなので自分でなんとかしないといけない割合が増加する(物価見合いで時給が2になっていても50分より多く働かないといけない)
ということが起こります。気にしているのは絶対額じゃなくて割合、だと思うのですがいかがでしょうか。数字一つでなんとでも言いようはありますが、これは明らかなミスリードだろと思ったので紹介することにしました。