この記事のもくじ
この記事では直接的に書籍の内容に触れることはできるだけ避けたうえで、読んでその内容について思ったことなどなど紹介します。
今回紹介する本
『MORE from LESS 資本主義は脱物質化する』です。
これまでの社会といえば大量生産&大量消費の繰り返しで発展してきました。それはすなわち石油であったり木材であったり金属であったり、あらゆる有限の資源を消費することでした。
消費なくして発展なしとでも言いましょうか。
ところが、現代特にこの10年ぐらいは物質の消費なくして資本主義は継続的に発展しています。それはIT関係の株価が伸びていることや「コト消費」と呼ばれる言葉が生まれていることからも示唆されます。
本書ではこのような社会情勢の変化を脱物質化と称してなぜこのような変化が起こっているのかを歴史を追いながら紐解いていきます。
本書の構成は以下の通りです。
- マルサス主義時代
- 工業化時代
- 工業化時代の弊害:公害、欲望の加速度的上昇
- アースデイにおける問題提起:人類が増えすぎていることが地球にとって脅威
- 脱物質化への転換
- リサイクルや消費抑制は脱物質化に寄与しない
- 脱物質化に寄与したテクノロジーの発展
- アダムスミスによる資本主義の考察
- 資本主義の問題を解決するための人と政策の役割
- 4つの騎士による世界の改善
- 過去より現在、現在より未来はよくなる
- 人の集中、経済活動の集中、富の集中
- 社会的資本(人、地域のつながり)の分断危機
- 脱物質化の未来予測
- 脱物質化をさらに進めるための鍵は政府と企業
ボリュームたっぷりで読むの大変でした。
脱物質化を推進した「4つの騎士」
元々は大量消費大量生産だった世の中が脱物質化=MORE from LESSに変わった因子を本書では4つの騎士と読んでいます。以下の4つです。
- 資本主義
- テクノロジーの進歩
- 市民の自覚
- 反応する政府
資本主義は成長が前提で成立します。成長とはより良いものをより安く、よりものを使わずに作れることと理解できます。そのほうが同じ資源でもたくさん作れますしね。
パソコンやスマホ、自動車などあらゆるものは昔と今で比べるとより軽く、より高機能で、価格はまぁ会社が利益を出すためにインフレ見合いで上がっていると言えますが資源を消費しない方向に進んできました。
これを支えているのがテクノロジーの進歩です。最近でいうとIoTとかDXに代表されるようにモノを使わずにサービスが成り立ったり、情報のやりとりができるようになったことが地球の資源を守ることに寄与しているわけ。
3点目と4点目はまさにこの地球で生きている私たち自身が地球のモニターとして公害はよくない、資源は大事に使われるべき、生態系は保護しないといけないといった考えのもとにあることで政府の政策(法整備、支援)につながることを指しています。
これは正常な民主主義が世界で広まっているからこそと思います。
それこそ戦時中の日本のような国のあり方だったらまず無理ですね。
資源を守ることと経済成長は両立
この本のいいと思ったところ
- 資本主義経済に関する十分すぎる情報量
- いまより未来はもっと良くなる思考
- 数字と図表ベース
自分にとっては間違いなく名著です。著者が超有名なベストセラーであるFACTFULLNESSを参照して自身もその考えがあることもプラスの一因です。
根拠が伴った説明はすんなり正しく情報を理解できるという好例が本書です。
個人個人でもできるMORE from LESS
4つの騎士の1つは市民の自覚です。これがなければ企業も政府もアクションを起こす必要はありません。
言い換えるとそれがあるからSDGsとかESG投資などこれまでの価値観であれば重視されないはずの活動が良しとされ、また、成長であるとされるようになりました。
じゃあ具体的な行動は大きな組織にお任せでいいか?それは違うと思います。
- 公共交通機関で移動する。徒歩自転車を積極利用
- 自分で賄った方がいいものは自給自足
- 脱物質化に貢献しうるアイテムの利用
このようにささやかながらできることは個人でもあります。
自給自足はしていませんが、それ以外はしていますし少なくとも大量生産大量消費にはNOの姿勢を明確にして生活しています。それがひいてはフードロスの削減⇨過剰な飼料を耕す農地をなくして森林保護、とか電力需要の削減⇨石炭火力など資源を食い潰すアクションにブレーキをかけることに貢献できると信じています。
この本のおすすめ度と読むのがおすすめな人
おすすめ度は10点満点中10点です。
この本は次のような方が読むのにぴったりと思います。
- 従来の資本主義のあり方に疑問を感じている
- SDgsやESG、カーボンニュートラルに興味がある
普段1000円するかしないかの新書を買っている中では定価で2640円(税込)と価格は高いです。
が、FACTFULLNESS並みに手元に置いておくべき良書だと思います。お財布に余裕があるなら読んでみることを全力でお勧めします。