【2022年読書レビュー】リチウムイオン電池の本

この記事では直接的に書籍の内容に触れることはできるだけ避けたうえで、読んでその内容について思ったことなどなど紹介します。

まえがき

今回紹介する本

『リチウムイオン電池の本』です。


「スマホのバッテリー持ち悪いなぁ」「なんでバッテリー性能が上がらないんだろ」

スマホの新製品が登場するとこういう声を耳にします。上記のようなことを思っている方がもしいらっしゃるなら聞きたいことがあります。

  • スマホのバッテリーには何が使われているか知っていますか?
  • どうやったらバッテリー性能が上がるかわかっていますか?

自分は電池についてかじる程度の勉強をしたことがありますが、バッテリー性能を上げると言うのは容量を大きくする(=持ちをよくする)にしろ、充電の時間が短く済むようにするにしろ大変な労力の上に成り立っています。

批判したり文句を言ったりするのは簡単ですが、せめて電池についての理解を深めることで研究開発をしている方へのリスペクトは持っといてもらいたいと思って紹介することとしました。

本書のまえおき

著者も上記と似たようなことをおっしゃっています。リチウムイオン電池は車にもパソコンにもスマホにも家電にも、現在電池といえばニアイコールでリチウムイオン電池と言ってもいいほどに普及しているのに、その中身を知らない人は多いです。というかわざわざ勉強しようという動機もないと思います。

そういう方がもし興味を持って勉強しようと思った時の超入門書として書かれたのが本書です。

本書の構成
  1. 電池の分類とリチウムイオン電池の位置付け
  2. リチウムイオン電池の基礎知識
  3. リチウムイオン電池の安全性と将来性

自分は学生時代にちょいとリチウムイオン電池についてかじったことがあるので書籍の内容は既知でした。その立場でこれは「イロハのイ」として知っといて欲しいと思った事項を次項で列挙しておきます。

無学者でも押さえておきたいリチウムイオン電池の基礎の基礎

  • 繰り返し使える電池である
  • 主要な二次電池の中ではトップクラスのスペック
  • 必要とされるものに応じて能力を振れる

繰り返し使える電池である

正確には”二次電池”です。一回使い切ったらおしまいなのが一次電池です。

なんとなく乾電池=一次電池というイメージを持たれている方もいるかもしれませんが、近年はエネループとかエボルタなど充電して使える乾電池もあります。乾電池っていうのは構造の問題だけなので勘違い注意です。

主要な二次電池の中ではトップクラスのスペック

他の二次電池というと鉛蓄電池とかニッケルカドミウム電池(ニッカド電池と呼ばれることも)がありますがこれらと比べてリチウムイオン電池は

  • 電池の重量当たり、体積あたりに蓄えられる電力(エネルギー密度)
  • 充電効率

などにおいてトップクラスです。既にいいものは見繕っていて、その中で色々研究開発されているんだって思っておきましょう。

必要とされるものに応じて能力を振れる

一口にリチウムイオン電池といっても、電池を構成する材料を変えるだけで発揮できる能力は変わります。スマホに使うなら一瞬で出せるパワーは小さくてもいいのでできるだけバッテリーが持つようにした方がいいですし、掃除機や工具を動かすならバッテリーを持たせることよりも装置がばっちり動くように出力を確保する方が重要です。

それぞれの用途に合わせて能力を調整できるのはリチウムイオン電池のメリットです。

あとがき

リチウムイオン電池はそろそろ頭打ち

何十年とたくさんの企業や大学が研究を進めてきた結果リチウムイオン電池の性能は少しずつ上がってきていますが、言い換えると限界に近づいてきています。

当たり前ですが「理論的にはここまでしか出せない」という能力の理論値があるわけでどうすってんころりんしてもこれは越えられません。もし「リチウムイオン電池の理論値を超えたリチウムイオン電池が誕生した!」という報道が出たとしたらそれは

  1. そのニュースが嘘
  2. 理論値の計算を間違えていた

のどちらかですが、まず2はあり得ないので1番ということになります。要はあり得ません。

まずスマホや家電諸々のバッテリー持ちに文句を言っている方に認識して欲しいのは「どう頑張っても超えられない線に来ているのでリチウムイオン電池のままでバッテリー持ちが2倍になるみたいな期待は筋違い」ということです。

ポストリチウムイオン電池にはほどほどな期待で

じゃあもう何もしないかと言ったらそんなこともありません。リチウムイオン電池の後釜も研究はされています。

NEDO 二次電池技術開発ロードマップ 2013というのがあって(本書にも掲載されています)、ここで将来の二次電池の展望が書かれています。

作動電圧で見ると現行のリチウムイオン電池がトップクラスですが、容量(Wh/kg)で見ると

  • リチウム硫黄電池⇨1000〜2000
  • 金属ー空気電池⇨2000〜

で倍以上です。


っていうと「じゃあ今の2倍4倍持つようになるんだ!」と思いたくのはわかりますが落ち着きましょう。

まず、これらの実用化は2030年以降を想定しています。10年先の話です。

そして、そもそも理論値通りのものが出来上がるかどうかも分からなければ充電して使えるようになるかどうかもわかりません。これからの話です。

期待はしたくなりますが、気長に「こんなもんでたら良さそうだなぁ」という朧げな記憶として知っておいたらいいかな〜と思います。

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