この記事のもくじ
まえがき
今回紹介する本
『地球温暖化/電気の話と、私たちにできること』です。
本書の概要
2021年に「2050年までのカーボンニュートラル実現」方針が発表されているように地球温暖化への関心は高まっています。もはや無関心であることはいけないような雰囲気すらあります。
地球温暖化防止活動推進センター 日本の部門別二酸化炭素排出量(2020年度)に掲載されている日本国内での二酸化炭素排出原因をまとめたグラフを紹介します。
業務・家庭部門がやたら少ないですが、直接排出は大本二酸化炭素を発生させた部門ごとで集計しているからです。オフィスや家庭で使っている電力は元を辿れば発電所で燃料を燃やして電力を作っていて、そこで二酸化炭素が発生しているので最終的な使い道は家庭であってもオフィスであっても「エネルギー転換部門」に集計されるものになります。
さて、このグラフの通り発電所などのエネルギー転換部門が一番の二酸化炭素の発生元であり、ついでのは鉄鋼業などの産業部門、運輸部門と続いていきます。じゃあこれはなぜかといえば日本は石炭火力がメインだから。
だからこそ今は太陽光発電や洋上風力発電を普及させようとしたり原発再稼働に向けて動いたりしているわけです。
本書は地球温暖化という広い括りの中でも「電力」の問題に特化して現在の構造の問題点と地球温暖化対策になる取り組みを紹介しています。
- 人類は滅亡に向かって着実に進んでいる
- なぜ温暖化は止まらないのか
- 地域・家庭でできる二酸化炭素排出削減
- 送電網(グリッド)から自由になり、地域で発電・蓄電しよう
- 森林資源を活用した「炭素貯金」
- 土壌からの温暖化防止
少々極端?著者が提唱する発電・蓄電
石炭火力の効率化?原発の推進?再生エネ?どれでもない
巷で議論される時の論点というと
- クリーンエネルギーである原発の再稼働をすべきだ!
- いやいや再生エネを推進すべきだ!
ですが、著者はどれでもありません。原発はずっと動かしっぱなしじゃないといけないからダメだといい、再生エネは今の制度だと消費者だけがコスト負担する構造になっていてとても普及するような土壌になってなくてダメだといい。読みながら「本気で言ってるんか・・・」と思ってました。
ちなみに、国としては再生エネの比率を電源構成ベースで2030年時点36〜38%、原子力を20〜22%にしたいそうです(経済産業省 資源エネルギー庁)
じゃあどうする?
ということなんです。これに対して著者は地域・家庭ができることとして具体的にいくつか明記しています。
- 自分で使う範囲の太陽光発電を導入する=既存の電力網に依存しない生活
- 省エネ家電への買い替え
- ゴミや糞尿からメタンガスを取り出して燃焼、発電する
- 自家発電で余った電力は蓄電して使う
著者のスタンスとしては大前提に「既存の電力網では発電ロスが大きすぎて少なくとも家庭レベルでは非効率」というのがあります。それを踏まえて、まず必要な電力量、エネルギー量が小さくなるようなことをして、その上で必要なエネルギーを自給自足できるようにして既存の電力網に頼らないようにしようぜって話になってます。
節約できる範囲で節約して、あとはそれを自分で稼ぐ方法を考える。FIREを目指したり家計改善を目指したりする時と考え方は同じですね。
あとがき
著者自身「家庭の二酸化炭素排出量だけでいえばマイナス45%でいいところすでにマイナス78%になっている」と言っています。つまり、その電力の出どころはさておき家庭で消費する分だけで見ればすでに削れているわけです。
そのうち自給自足できていないものを更に自給自足できるようにすることで「エネルギー転換部門」で発生させてしまう二酸化炭素排出を削ろうというのはわかります。でも、最初に見せた直接排出のグラフではなく間接排出のグラフで見てもこうです。
これも経済産業省の資源エネルギー庁に乗っているカーボンニュートラルのイメージ図ですが、これだけ見ると今の8割くらい削れないと達成できません。著者の言うとおりにすれば「8」のうちの「1」は削れますが、どう考えたって産業部門、運輸部門を削った方が効率的です。
この努力が無駄とは言いませんが、どうせ働きかけをするならそっちに注力した方がいいんじゃないかなと思います。機会あるごとにいつも言ってますが個人の意見を申し上げるなら
- マイカーを使うことのペナルティを大きくする(≒船舶・電車・飛行機・バスなどを使う人を優遇する)
→「車じゃないと不便だ」ではなくて「車がないと住めないような場所に住むな。住みたければ自分でコスト負担してください。市町村としてはコンパクトシティを志向します」にする
これを全力で推したいです。