この記事のもくじ
この記事では直接的に書籍の内容に触れることはできるだけ避けたうえで、読んでその内容について思ったことなどなど紹介します。
今回紹介する本
『知ってるつもり 無知の科学』です。
人には覚えられることの限度があるので知らないことがあるのは仕方ない話ですが「知ってるつもり」は悪い意味で予期しない状況を生む元になるので問題です。
本書はそうならないようにするために何故自分たちは知ってるつもりになるのか、知ってるつもりにならないようにどうしたらいいのかがわかる本です。
- 知ってるつもりなこと
- 個人の無知と知識のコミュニティ
- 「知っている」のウソ
- なぜ思考するのか
- どう思考するのか
- なぜ間違った考えを抱くのか
- 体と世界を使って考える
- 他者を使って考える
- テクノロジーを使って考える
- 科学について考える
- 政治について考える
- 賢さの定義が変わる
- 賢い人を育てる
- 賢い判断をする
- 無知と錯覚を評価する
「知ってるつもり」の原因は自分以外の存在
他者の知識=自分の知識という勘違い
目次からおおよそ見当がついた方もいるかもしれませんが、共通して言えることは
自分以外の何者かから情報(知識)を得られることを知っているから
と言えます。
自分以外が何か、また知ってるつもりな結果どうなるかを具体的に示すと
- 他人
- 自分よりある専門に詳しい人のつてがあれば、その人に聞けばいい
- でも自分が知ってるのは「その人に聞けばいい」ということであってある知識ではない
- インターネット
- いつでもどこでも検索すれば情報が出てくる
- 調べれば出てくることしか自分は知らない。ネットが繋がらなければ何もできない
- GPS(カーナビ、Googleマップなど)
- 思考停止してても目的地まで到着できる(これで自分は行き方を知ってる気になる)
- GPSが使えないと案外道を知らなくて迷子になる
似たような経験したことないですか?知らないとわかっていれば対応が変わるのに知ったつもりでいるせいで困ることがある、と言うのをわかってもらえるのではないでしょうか?
極論、「自分は何も知らない」と思っておく
この本のいいと思ったところ
- 科学や政治といった身近な事例を通じて自分が無知であることを知れる
- 知ってる知らない(認知)に関する具体的な研究を知れる
知ってるつもりに私たちがなってしまう原因の結論だけではなくて、そこに至るまで研究者がどんな実験をしてどんな結果を得ていたのか。そこまで示されて自分が何かについて知ってるつもりであると気づかないなら重症です。
本書の表現を借りると「自らの錯覚を突き付けられて、腹を立てる人」になるなら救いようがありません。謙虚に知らないものは知らないと受け止めておきましょう。
本書の内容に関連して思ったこと
他にも不特定多数の方が知ってるつもりになっているのではないかと思ったことを列挙してみます。
一つは年金問題。
- よくある意見:年金は破綻する!自分たちはもらえないんだ!
- 上記の方がちゃんと調べてなさそうなこと:
- 政府が出している年金水準の予測⇨楽観ケースだけでなくて悲観ケースも考えている
- GPIFのこと⇨損失(というか本当は含み損、一時的なマイナスリターン)しか知らない、長期的なリターンを知らない
- 年金の財源のこと⇨国民年金分はそのうち半分が税金。
もう一つは税金に関する問題。
- よくある意見:税金を上げる前に政治家や公務員の給料を減らせ!
- 上記の方がちゃんと調べてなさそうなこと:
- 国家公務員や議員さんの給料、その他手当⇨調べれば出てくるし、仮に0円にしても増税不可避なのは自明
- 給料の設定⇨妥当性はさておき、ボーナスについては民間の状況を反映している。実際2021年度は減額されています。(参考:日本経済新聞 国家公務員ボーナス減額へ 政府が人事院勧告受け入れ)
例えば増税をするなら、お願いする側の姿勢として身を実際に削るという姿勢は必要だと思いますよ。そこは勘違いなきようにお願いします。
また、国家公務員になるには上記のようなバカの一つ覚えで批判している人よりよっぽど勉強を頑張ってきて試験も通過しなければならないので、能力(もしくはそれまでの頑張り)に対する対価を得ているだけとも考えられませんかね?
知ってるつもりなせいで却ってバカを見たり恥をかくことになるので要注意です。
この本のおすすめ度と読むのがおすすめな人
おすすめ度は10点満点中9点です。
この本は次のような方におすすめです。兎にも角にも自分は知らない、知ったつもりになっているのだと自覚することが損をしないための第一歩です。
- 「自分は何でも知ってるぞ!」と言う人
- よく知ったかぶりなことを言って損している人