【2022年読書レビュー211】自然災害と大移住

今回紹介する本

『自然災害と大移住』です。


近年は台風や地震のみならず、線状降水帯なるものでの水害が増えている印象があります。もうどこに住んでいてもある程度災害にさらされているという意識がまずは必要な時代になっています。

とは言いつつ、ベースとして災害リスクが高いところはあります。地震でいえば東北地方太平洋側や北陸の能登近郊など定期的に大きい地震が来る地域がありますし、台風でいえば九州や四国がどうしてもルート上になりやすい。

じゃあ都会はどうか?なんだかんだ東京名古屋大阪がいいんじゃない??というとそう簡単な話ではありません。これらの地域、南海トラフ地震の影響を受けるとされていますし東京に至ってはそれと別に首都直下地震のリスクがずっと叫ばれています。(ただこれは20年前にも「30年以内に70%」といってたので本当に来るのかはわかりませんが)

災害が一度発生すると たくさんの人的被害が発生しますし、師匠をしなかった場合でも、その土地から移住を迫られるケースが散見されます。大雨による浸水被害が起こった時や福島第一原発のようなケースはそうです。

筆者は昨今の増え続ける自然災害や少子高齢化と言う日本におけるマクロなトレンドを前提として、大規模な移住を推奨している立場にあり、そのための具体的な方策について解説されています。

本書の目次
  • 大移住のすすめ
  • 増えすぎた空き家
  • 実現可能性を探る
  • 日本の経済を甦らせよう

著者の大枠のアイデア

見出しを見てしまうとおおよそ見当がつくのですが、筆者は大規模な移住政策を進める場合には、次のような前提そして方策に沿って実現しよう、もしくは実現できると考えているようです。

  • 現在の日本は、人口が非常に限られた大都市に一極集中しすぎている
  • 災害対策は実行しようと思えばできるが、どこまですればいいかと言う絶対的な基準はない
  • 川のそばや海抜に対する高さが低い大昔の人が住んでいなかったような地域は遊水池として転用すべし
  • 地方で空き家問題が叫ばれているが、絶対的な空き家の数で言うと東京が多い。だから、その空き家を活用して移住を進めさせれば良い。
  • 通常、人々は仕事の転勤でないと住む場所を変えようとしないので、もしこの政策を進めるなら、市町村や国が頑張って説得するしかない

賛同できる意見

上記には書いてないことなのですが、空き家が増えすぎる問題の背景の1つとして空き家があるにもかかわらず、新しい家を建て続けていると言う事情を指摘しています。

これについては、自分も同感で、なんで今あるものを解体しないで、新しい物館続けるのか、しかも人口減少時代なのに日ごろから思っています。 新しい家を建てるなら、既存の所有している古い建物を解体しないといけないと言うようなルールを作っても良いのではないかなと思います。

賛同できない意見

2つあります。

  • 転勤による移住を国民は受け入れている(我慢)のだから、移住を推し進めても問題ないという論調
  • 経済を復活させようと言っておいて、この政策に必要なお金は消費税の増税でまかなおうと言っている

それこそ筆者が本で書いている通りですが、転勤による移住は我慢して受け入れているだけであって、別に希望しているわけではありません。やらなくていいなら誰もやりません。自然災害に対する対策としての移住も、もし強要されるのだとしたら仕方なく受け入れると思いますが、喜んでやる人なんて誰もいないでしょう。

にもかかわらず、本の中では教養と言う言葉を使わずに説得と言うオブラートの表現を使っているのがいかにも悪らしいなぁと思います。このスタンスだときっと「 あくまで説得であって、勝手に移住したのは皆だよね」って言ってきそうな気がします。

そして、消費税の増税に関して、財源として必要だからと言うのと、国民全体で負担すると言うことを考えれば、消費税と言う選択肢自体はいいと思いますが、今の状況下で商品を見たらどうなるかは少し考えればわかるはずです。本書を読む限りだと、自然災害による被害を減らせればそれで良いと言うふうに聞こえていたのですが、最終章でなぜか日本経済の話までされたので、そんな都合の良い話があるんだろうかと自分は疑問に思いました。

今のまま生活したとして自然災害が発生した場合の経済的な損失と、自然災害による経済的な損失を防ぐために移住を強要した(あえて強要としました)場合の経済的な損失の比較は絶対に必要でしょう。そこには消費税増税した場合の影響ももちろん含みます。

あくまで推奨とし、自己責任でいいのでは?

一応憲法で居住地に関する自由が規定されているわけですから、憲法変えない限り、国や政府として移住を強制的にすると言うのはやらないほうがいいと思います。老後資金の話で言うとiDeCoやNISAが拡充されて、事実上「自分のお金は自分で何とかしてね」と言う時代になってきていますが、 住む場所についても同じ考え方でいいと思います。

国や地方公共団体としては、「この辺に住んでくれたら災害のリスクが低いですよ」というの提示をしておく。その上で災害のリスクが高いとされている場所は「住んでも良いけれども、推奨しない。もし何か災害があって住宅の損害が受けたとしても 公営住宅や災害復興住宅等への仮入居をする場合には、優先度を低くする」と言うような事はしてもいいんじゃないかなと思います。自分の好きな場所に住まわせろ、でも何か起こったときの保証もしろと言うのはあまりに身勝手です。

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