【2022年読書レビュー】自動車の社会的費用

まえがき

今回紹介する本

『自動車の社会的費用』です。

本書の概要

これは交通手段別の旅客流動実績です(出典:国土交通省)。本書は1974年というほぼ半世紀前に書かれた本ということもあり、当時の旅客流動の割合も記載されております。1960年は1.4%、1970年が30%です。著者はこの時点で自動車社会であるという認識のもと様々批判めいた意見を出しておりますが、今のシェアを知ったらどうなっちゃうんでしょう。

著者がこのような本を書くに至った背景としてしばらく海外に住んでいたことがあります。久しぶりに日本へ帰ってきた時に日本の自動車のあり方は歩行者に危害を及ぼす仕組みになっているだけでなく、危害を与えているくせに必要な対価を払っていないと考えたのです。

本書ではこの負うべきとされる「社会的費用」について経済のお話も交えつつ数字で以っての説明がなされています。車は嫌いではないですが、自動車優遇+公共交通冷遇な日本社会には大反対なので自分にとっては超都合のいい本でありました。

本書の構成
  • 自動車の普及
  • 日本における自動車
  • 自動車の社会的費用

自動車の優遇されすぎポイント

半世紀も前の本なのに自分が常日頃思っていることをズバズバ指摘してくれるもんなので「よくぞ言ってくれた!」「もっと言ってやれ!」と嬉々としながら読んでおりました。

具体的には次のような言い回しですね。

  • 歩行者や周辺環境の悪化を招いている
  • 鉄道は自分で保守のコストも負っているのに自動車を使っている人は負担していない
  • 自動車で混雑する⇨新しい道を作る⇨自動車を使う人が増える⇨結局混雑する⇨新しい道(略)
  • 元々は歩行者のためだった道路を自動車が通るようになった
  • 勝手に自動車に乗ることを選択しているのだから「混雑という形で損害を被っている」ことは費用負担にはならない

費用負担の話で言えば「ガソリン税払ってるし」という反論が飛んできますが、乗り物を動かすときの燃料は電車でも飛行機でも路線バスでも一緒です。自動車だけじゃありません。

「でも自動車ないと不便だし」というご意見に対しては「勝手に自動車内と住めないところに住んでる自分が悪いんでしょ?」と心の中ではしょっちゅう考えています。

とりわけ人口減少時代にあって鉄道や路線バスすら採算が合わないからタクシーやオンデマンドで・・・という論調をよく見かけますが、いやいやそうじゃないでしょうと。方や高齢者の危険運転をワァワァ言っといて自らは自動車に乗り続けるというダブルスタンダード。

何より一歩行者として困るのは明らかに車1台通ったらピッタリな広さの道でも車はぶっ飛ばして歩行者側がぶつからないように避けとかないといけなかったり、横断歩道に止まってても大概の車は無視して通過するという自動車ユーザーの態度ですね。あの自分が基準だと言わんばかりの乗り回しがムカつきます。

だからこそ、極論を言えば車に関しては今よりも税金を増やして、そのお金は公共交通の充実にお金を使うくらいのことをしないと渋滞も減らないし自動車中心の社会も治らないんじゃないかと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA