【2022年読書レビュー】農家はもっと減っていい 農業の「常識」はウソだらけ

まえがき

今回紹介する本

『農家はもっと減っていい 農業の「常識」はウソだらけ』です。

本書の概要

円安になって、ウクライナ侵攻が始まってものの値段はどんどん上がっています。身近な品目はもちろん、食べ物です。小麦が〜とか、家畜を育てるための穀物の飼料費用が〜など理由と対象はいくらでもあります。

こうなると一段と強まるのが「自国で必要なエネルギーや食料は調達できるようにならなければいけない、日本アh資源がないのだから他所への依存を減らしておかないと、輸出してくれなくなったらお終い」という意見です。

この構成要素の一つにたとえば農業のなり手問題が上がってても違和感を持つ人は少ないでしょう。こちらは農林水産省のHPからデータを引用した農業従事者数の推移です(出典:農業労働力に関する統計)。ちなみに「基幹的農業従事者」とは「農業に主として従事した世帯員(農業就業人口)の うち,調査期日前1年間のふだんの主な状態が「仕事 に従事していた者」」のことです。ザクっと言うと専業農家or兼業農家だけど農業がメインのいずれかです。

他にも農業というとどうやって儲かるように支援するか(=支援するのが当然である)とか有機栽培はいいよね、みたいな一般的に常識とされている事柄がたくさんありますが、バッサバッサとそれらをぶった斬っているのが本書です。

8、9章は体のメンテナンスがどうだの働く姿勢がどうだのといった直接は関係ない話に飛躍しているので、読みたければ読んでもいいくらいの内容かなと思いました。書いてあることは確かかなと思いつつ、別にこの著者だからの特異的な意見ではなかったので。

本書の目次
  • 農家はもっと減っていい
  • 淘汰の時代の小さくて強い農業
  • 小さくても売れる 淘汰の時代の弱者の戦略
  • 難しいから面白い ものづくりとしての有機農業
  • 自立と自走 豊かな人を育てる職業としての農業
  • 新規就農者はなぜ失敗するのか
  • 「オーガニック」というボタンの掛け違い
  • 自立した個人の緩やかなネットワーク 座組み力で生き抜く縮小時代の仕事論
  • 自分を「栽培」できない農業者たち 仕事を長く続けるための体づくり心づくり

縮小時代に目指すべき「小さくて強い農業」

日本はだだっ広い平野が少ないので海外のように、広大な土地で機械をゴリゴリに使った大量生産というスタイルは実現できません。山あいの土地を切り拓いて田んぼなり畑を営んでいるという方は相応にいらっしゃることと思います。

見出しで「もっと減っていい」とあるので、そういう農家はいなくなればいいのかと思いそうですがそうではありません。大量生産型で突っ走る人たちと同じ土俵で戦っても仕方ないのにそういうスタイルを目指すのはナンセンスだということです。

では、規模の小さい農家はどうすればいいかということであげているポイントが次となります。

  • 価格競争の土俵に乗らない

価格競争の土俵に乗らない

本書の表現を引用します。

・98円のチラシに惹かれて店に来る顧客の大半は、「98円の小松菜」を買いに来る人たち

・肉厚で旨味のある久松農園の小松菜の良さが、顧客価値になりにくい売り場

確かに普通のスーパーマーケットの普通に陳列されているところに置いたらそうなりますね。今はそんな「普通のスーパーマーケット」でも地元の野菜コーナーみたいなのを置いてくれているところ ありますが、そこにお客さんが向かっているかといったら正直少ないなと思います。自分が住んでるところにもありますが。

皆がいいと思うものに手を出さない

皆がいいと思うものを作って出す。これは農業に限らず、ビジネスをする上では必要要件に思えますがなぜだめなのか。

たとえば品種改良なんかをして他所よりいいものを作ったとしてもすぐに力のある組織が同じものを作り出す、しかも規模の力で零細よりも販路や価格面で優位になるように。といった具合で農業自体が他社との差別化を図りづらい業種であると指摘しています。

セールスポイントを曖昧にする

これも意外に思います。

理由は先ほどと同じように顧客獲得のための差別化は規模の小さい農業をされている場合は機能しないから。

なので糖度とか大きさとかわかりやすい比較指標には乗っからずに「あの人の野菜だから買おう」とか「普通に美味しい」みたいな理由づけで以ってリピーターがついてくれるような戦略がいいとおっしゃっています。

あとがき

「日本は食の問題を考えるべきだ」

「農業に従事してくれる人を増やすべきだ」

と偉そうにいっといて自分はやりもしなければ支援もしないというのはダブルスタンダードもいいところになってしまうので、せめて消費者として応援する=購入するくらいのことはした方がいいんじゃないかと思います。

道の駅で買うとか直売所で買うことまではしていない(というか近くにないのでできない)のですが、スーパーで野菜や果物を買うときは基本的に地元の農家さんが育てたものを買ってます。

同じスーパーへの陳列なのに仲介がいないせいか知りませんが、大量に陳列されているものよりも安かったりサイズが大きいというメリットがあります。正直、味は出たとこ勝負な時もあります。

こないだ買ったスイカなんかは普通に出回っているものよりもあんまり甘くなかったんですが、これが本書で言う「普通に美味しい」状態なのかなとも思いもしました。

食への問題意識をもし持ってるなら、そんな人には食べて支援くらいはしてほしいものです。

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