この記事のもくじ
この記事では直接的に書籍の内容に触れることはできるだけ避けたうえで、読んでその内容について思ったことなどなど紹介します。
今回紹介する本
『日本の構造 50の統計データで読む国のかたち』です。
その時々の状況を理解するには文字だけ定性的なデータだけでなく数字が伴う定量的なデータが有効です。そのために集計されているのが種々の統計データです。
本書は日本の現状がわかる50の統計データを通じて海外と比べてどうか、昔の日本と比べてどうか、これから日本がどうなっていくのか解説しています。
著者は「格差の実態がわかるようにする」とおっしゃっていますが、それは結果論であってすべての統計データが格差の実態をわかるようにするために取られているわけではないのであらかじめ留意しておいてください。
- 経済に関する統計(経済成長率、労働生産性など)
- 教育に関する統計(学費、学歴と年収など)
- 労働、賃金状況に関する統計(働き方、労働階級別の賃金など)
- 生活に関する統計(世帯構成、犯罪率など)
- 老後と社会保障に関する統計(保険未納率、貯蓄率など)
- 富裕層と貧困層の格差に関する統計(ジニ係数など)
- 地域間格差に関する統計(学力、年収など)
- 財政に関する統計(所得税率、税と社会保障の国民負担率など)
- 今後の日本
人口減少時代の経済成長の肝=労働生産性
生産されるものの量や価値(⇨経済成長)=①働いている人の人数*②働いている時間*③働いている時の生産性
このような定義があるとすると日本は少子高齢化でバリバリ働ける人が減り、働き方改革で長時間労働は是正されている(これ自体はいいこと)なので①と②が減っていきます。
よって③を上げていかないとこれまで通りの質を維持することすらできませんが、残念ながら日本の生産性は
1990年代・・・世界1位⇨2016年・・・世界15位
(※絶対値的には増加はしています。対世界の相対評価が悪くなっているということ)
に落ちてしまっています。本書ではこの要因を以下のように考察しています。
- 企業が設備投資をケチった⇨株主重視、不景気による投資控え
- 設備以外の投資もケチった⇨ITスキル、特許
- 大学教育の欠陥⇨教育費の家庭任せ、国立大学の授業料の急峻な値上がり
働くようになった身からすると設備投資全般をケチってるなという印象が強いです。目先の資金回収が優先されて「金がかかるものは非正規雇用の方でも雇って賄えばいっか」という風潮は日本の社会全体であると思います。
投資ばっかりは個人ではどうしようもないのでここは国や企業に頑張って欲しいところです。
文句を言う前に自己研鑽も
この本のいいと思ったところ
- 数字で一目で日本の現状がわかる
- 自分で物調べする時にも参考にできるサイトや文献が元になっている
自分はブログを始めるようになってからできるだけ信頼できる機関(主に官公庁)かつ数字がある情報をするようになりましたが、そんな機会もなければ数字で理解する癖がないので貴重です。
格差についてはとやかくいう前に・・・
本書のスタンスは比較的「日本は悪くなっている!」「これからの日本は大変だ!」ですが、それとは別に個人個人での頑張りも足りていないのでは?と思います。
労働生産性の話なら個々人で勉強するという努力ができますし、年金の話ならできるだけ働いて健康に暮らすようにすることはできます。その努力は放棄して何でも国がやってくれるとか会社が面倒を見てくれると思っている思考も同じくらい危険ではないでしょうか?
と、本書を読みながら考えておりました。
この本のおすすめ度と読むのがおすすめな人
おすすめ度は10点満点中8点です。
この本は次のような方が読むのにぴったりと思います。信憑性の疑わしいところばかり調べていたのであれば本書を参考にネットサーフィンすると得られる情報の量はともかく質の向上に期待できます。
- データで情報を見る癖をつけたい
- どんなところから情報収集するのがいいかわからない