この記事のもくじ
今回紹介する本
『51のデータが明かす日本経済の構造 物価高・低賃金の根本原因』です。
これまでも「なぜ日本人だけ給料が上がらないのか」とか「日本の経済の問題点」みたいな本はアホほど読んできたので今更言うことでもないかもしれませんが日本の実質賃金推移はこんな感じ。
そして消費者物価指数はこの通りで見事な横ばい。だったのが足元は爆上げしてて一般庶民が困っているのが現状です。
本書のコンセプトはこんな日本経済の現状を各種統計とデータで明らかにすることです。その上で日本経済を活性化させるためのアプローチが提唱されています。
1年ほど前に読んだ本では50の統計データですが、本書は51なのでこちらの方が1増えてますね。ちなみに同じ著者ではないので無関係ですし、取り扱っているデータの分野も不一致です。なので両方読んでも損はしません。
- 物価ー「30年ぶりの物価高」が意味するもの
- 賃金ー「世界で一人負け」日本の低賃金
- 企業経営と労働ー「人やモノにお金をかけない国」日本
- 「未熟な資本主義」を脱却する方法
言われるほどぐさっと来る日本の生産性
賃金は労働生産性に比例して上がるとされています。労働生産性とは付加価値/総労働時間です。本書ではこの労働生産性が長期にわたって低迷していることが示されています。
ではなぜ労働生産性が低迷しているのか。労働生産性とは付加価値/総労働時間なので付加価値がしょぼいか付加価値に対してかかっている時間が長すぎるか、はたまたその両方です。
ここで本書で指摘されているのは次のような環境面の要因です。
- 企業から人への投資がしょぼい(設備などの資本にはそこそこ投資してる)
- リカレント教育が普及していない
- 企業は内部留保を積み上げている
- 内部留保を積み上げているのは過去の経済ショックの経験から、いわゆる借金へ依存しないようになった
- 年功序列型の賃金
- 人材の流動性がない
この中で自分が「そうだなぁ」と思ったのは内部留保を積み上げるようになった背景のところですね。本書では「本来、企業は貯蓄よりも投資が多くなる投資超過主体」であるのに内部留保を積み上げて貯蓄主体になっているのがおかしいと。
確かに企業がやるべきことというのはお金をガッツリ借りて、借りた分を上回るような儲けを出して、その儲けを使ってさらに規模を拡大した投資をして(ここでいう投資とはNISAとかiDeCoの話じゃなくてビジネスに投資するという意味です)・・・の循環をして会社としての規模も収益も拡大していくことです。
現状、そういうスタンスでやってる企業って思いつきません。「守りの姿勢が強い」のはその通りです。
個人としてはいつ転職ありきになってもいいように
そういうわけで提唱されているアプローチは転職が活発になるような環境づくり、例えば成果報酬型になることや年功序列型をやめるというもので、まぁよく聞くものです。
ただ自分は企業がこれをいいように解釈して「成果型にするけど給料は今と比べてあげない」かを懸念しています。企業からしたら利益を上げたいのにわざわざ人件費が増える方向にシフトしませんよね。人件費を補って余りあるほどに利益が増えるなら別問題ですが、そうなるような心当たりはありません。
でも終身雇用だけ廃止されて転職ありきになる、ことは十分考えられるので個人個人ではもし終身雇用制度や現在の解雇しづらい法整備が変更になって今の勤務先からクビと言われても仕事にありつけるようなスキル習得が必須です。ベストは特定の企業に頼らずに自分の力でビジネスを起こして収入を得ることですが、それはハードルが高いと思うので、まずはいつでも転職しようと思えばできる状態にすることなのかなと思います。